孤軍奮闘部屋

説明しよう!このブログは、基本一人で何かを極めようとしている28歳の孤軍奮闘記である!

続:拡張型心筋症による父の再入院ー再び敗血症

父が腸の手術をしてから数週間が経過しましたが、容態が思うように良くならず、再び敗血症になっています。

 

11月2日(土)の昨日、病院から電話があり、先生から説明したいことがある、と言われました。母と、そして弟と一緒に病院に到着すると、説明するための部屋に通されて、それから先生が2名入ってきました。心臓血管外科の先生と、消化器内科の先生でした。いつになく重い雰囲気でした。

 

「手術をするべきかどうか悩んでいます」

 

端的に言うとそういうことでした。ICUに父が収容されてから1ヶ月が経過しましたが、どうやら父の容態は思うように良くならず、NOMI(腸が腐る状態)によって小腸がやられてしまい、更に肝臓にダメージが入ってしまっているようです(いわゆる多臓器不全)。そして、その臓器周辺に出血がみられ、全身に菌が回っている状態に陥っているようです。これを敗血症と呼びますが、どうやら父はその段階に達しているようです。

敗血症の原因は菌です。原因となる菌が増殖している箇所を取り除いてさえしまえば、敗血症は徐々に回復していく傾向にあるということなのですが、今回に限ってはその原因の特定が困難である、ということでした。強いて言えば、肝臓の裏側にある血腫(血液の塊みたいなもの)が怪しいのではないか、ということですが、確信を持ってそれが原因であるとも言い切れず、また、それを取り除くためには、大きな手術が必要であるということでした。父の体力も徐々に低下しつつある今、その手術をすること自体に非常に大きいリスクがある――換言すれば、手術をすることで命を取られてしまう可能性が非常に高い、と先生方は言いました。「非常に高い」という言葉を何度も何度も強調してきたので、その言葉が持つ意味の重さが伝わってきました。そこで出てきた選択肢は2つです。つまり、手術をするのか、しないのかということです。

まず、手術をすることになると、敗血症の原因となっている可能性がある、肝臓の裏側にある血腫を取り除くことになります。しかし、その手術自体が非常に重いものとなるそうで、これを医学用語で「侵襲」と呼ぶそうなのですが、つまりは手術をすること自体が患者の強い侵襲になってしまうということでした。対象となる血腫が存在するのが肝臓の裏側なので、まずお腹を開いて、それから腸をひっぺがえして、さらに肝臓を動かして、血腫を取り除く必要があります。父の腸は一度NOMIによって腐っていますし、それでダメージを受けている腸や肝臓をさらに傷つけることにもなります。加えて大量の出血が予想されるそうです。そして、無事に血腫を取り除いたとしても、それで敗血症がよくなる保証がどこにもないということでした。お腹に菌が溜まっていることは検査の結果で明らかなのですが、それ以上が特定できていないのです。敗血症がそれくらい進行してしまっているとも言えます。強いて言えば、その中でもちょっと怪しい箇所である血腫を取り除くことで、ひょっとしたら何らかの改善が見込まれる可能性がなくはない、ということでした。

もう一つは、手術をしないで薬で治療する方法です。菌を殺す薬(抗生剤)を点滴として注射し続けて、経過観察を取る方法です。ただし、こちらもあまり改善の効果は見込まれていません。なぜならば、この手術をするのかしないのかという選択肢が出てくる数週間も前から、ずっと抗生剤を点滴として投与しつづけているからです。その抗生剤ですら十分な効果が見込まれていないのに、今更、劇的な効果があるとは思えないというのが正直なところでしょう。複数の抗生剤を投与して、色々な組み合わせを試しているということなのですが、それを引き続き試していくという方法が選択肢として出てくるのです。しかし、お医者さん曰く、この方法だと早ければ数日で、長くても数週間で亡くなる可能性が非常に高いということでした。父の敗血症は既に「手遅れ」にあるということかもしれません。

手術をするのか、しないのか。手術をするにしても非常にハイリスクで、そしてローリターンである。一方で、手術をしなくてもジリ貧になる可能性が非常に高い―――つまりはそういうことでした。どちらの方法を取るのか、いや取るべきなのかは非常に判断が難しいところであって、私達(医者)だけでは判断する訳にはいかないので、ご家族の意見を聞かせて欲しい。と言われました。

 

実は、一週間くらい前に、母と二人で話し合ったことがあります。今後、大きな手術をする必要が出てきたとき、それをするのかしないのか、病院側から何らかの判断を迫られる可能性がある。その時にどうしたほうがいいのかということを、話し合ったのです。その時からずっと、母の意見はこうでした。

 

「これ以上、夫の体が傷ついていくのは耐えられない」

 

僕も同意見でした。父は心臓病になってから、補助人工心臓を埋め込む手術、そしてそれが動かなくなった時に補助人工心臓を入れ替える手術、更にそれで皮膚感染が進んでしまったために新型の補助人工心臓に交換するための手術、脳梗塞になった時の手術、腸が腐った時の手術、肝臓から大量出血した時の手術、胸の菌を取り除くための手術――大きな手術だけで7回もやっています。その度に麻酔で眠らされて、そして身体にメスを入れられています。本人が一番辛いのは分かっていますが、、、分かっているのですが、それでも...もういいんじゃないかと..そういう気持ちになってしまう自分がいました。

 

僕と母と弟と、三人で話し合って出した結論はこうでした。

「.....手術はしないで、抗生剤で見守る方法を選びます」

「....分かりました」

病院の先生方は、僕たちの目をまっすぐに見ながら、そう言ってくれました。

 

 

 

 

ここまでの経過をまとめます。

まず、2年前、父は突発性拡張型心筋症という病気になりました。これは心臓の血液を送る力が低下する病気で、父は、生まれつきこの体質であったということです。しかし年齢を重ねるにつれて体力が低下し、若いときにはなんともなかった身体が耐えられなくなって、この病気になりました。そして、その弱った心臓の力を助けるための補助人工心臓装置を心臓に埋め込みました。一時期は退院できるほどまで回復したのですが、それから1年後、その補助人工心臓に血栓がついて動かなくなりました。それを交換するための手術をして、更にそれから半年後、皮膚から菌が感染して、(経皮ドライブラインからの感染)新型の補助人工心臓に交換しました。これが今年の6月のことです。しかし、度重なる手術のダメージの蓄積や、何らかの原因で身体の内部に入り込んで悪さをしていた菌(エンテロバクター・クロアカ)が身体の中で繁殖して、全身にダメージを与えていきました。そして10月、非閉塞性腸管虚血(NOMI)という、腸が腐る状態に陥りました。これは身体がピンチになったがために、身体の中で優先順位をつけて、その優先順位が低いところから切り捨てるという身体の状態です。命を守るための身体の判断ということでしょうか。そして腸から毛細血管が伸びている肝臓にダメージが入り、身体の全身状態が悪化していきました。多臓器不全の状態です。そして、もともと悪さをしていた菌が急激に繁殖しだして、それが血液に乗って全身に回っている敗血症になっています。

父は以前、敗血症になったことがあります。新型の補助人工心臓をつける前のことで、今年の7月頃のことです。このときは補助人工心臓を動かすための、電源を外部から供給するためのケーブル(経皮ドライブライン)を伝って、肌の表面にあった菌が内部に入り込んで悪さをしていたことが原因でした。結局、その補助人工心臓自体を取り替えることで、病巣となっていた箇所を取り除くことが出来たので、敗血症を脱することができたのです。しかし今回は明確に敗血症の原因となっている箇所を特定することが出来ず、強いて言えば――――肝臓の裏側にある血腫が怪しいということですが、それを取り除いたところで劇的な改善は見込まれないだろうということです。

 

 話の最後に、お医者さんはこう言っていました。

「手術をしても、しなくても、ひょっとしたら同じ結果になるかもしれません」

もしそうであれば、そうなる可能性が非常に高いとすれば.............手術をせずに、抗生剤が効いてくれる僅かな可能性に賭けることにします。